約 3,182,898 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1947.html
神姫。 身長14cmの精密機械。 それは人類…いや、日本人が待ち望んでいた「ともだち」であった。 世に出て数年後、彼女たちははホビーへと進出する。 技術力を結集した武装を身に纏い、それぞれの意思を掲げ戦う機械の姫。 武装神姫の誕生である。 「友達、かぁ」 近くの電気店の中をほっつき歩く少女が一人。 長い髪をツインテールに纏め、若干目尻が吊り上っている。 背は175cmぐらいだろう。 「突然すぎるなぁ、転勤だなんて」 ブツブツ呟きながら「神姫コーナー」と書かれたエリアへ。 専門店でなくても神姫は取り扱っている、サービスの質こそ落ちるが。 フルセットが陳列された棚を見る、陳列といっても殆どが売り切れている。 残っているのはムルメルティア・飛鳥・イーダ・マオチャオ、イーアネイラにティグリース。 実は奥にアーンヴァルがあったのだが気付かなかった。 「……マオチャオ…かな?」 いったん手に取り 「でもなぁ…イーダもいいし…」 すぐに戻す。 こんなことを始めてすでに一時間、決断力が低いのが彼女の欠点であった。 「決まんない、…でも機会なんて今回しかないし…」 ふと手に取るはムルメルティア。 パッケージのトビラを開け中を見ると 「…あれ?」 違和感を覚えた。 パッケージ絵の精悍さとは違った何かが…。 次の瞬間、彼女はそのムルメルティアを持ってレジへと向かっていた。 サイズに合わない大きな電子音が、新しい命の目覚めを告げる。 「…ん」 丸い顔に小さくついた口がゆがむ。 「ふ…ふぇっ!? 今起きますっ」 大きな目をぱちっと開き、驚き飛び起きようとして…起きれずに頭を打った。 「がっ!? …ふあぁぁぁぁ~っ」 痛む頭を抱えて涙目になる少女。 「だいじょうぶ?」 「みゅ~っ…、うう。はい、大丈夫です…」 かわいらしい声がそう告げる。 ふと思った、マーモットとはいえ小動物的だよなぁと。 パッケージでの精悍さなどかけらない。 「え~っと。私のぉ、オーナーさんですよ…ね?」 「うん、わたしは古代すすみ。よろしくね、スィーマァ」 「はい! これからもよろしくお願いします、ますたー!」 二人の出会い、物語の歯車が動きだした。 あれから一週間くらいなのかな? 新年になって、おじいちゃんの店(模型店なのだ)にいっぱいお客が入っている頃の話。 「ますたー」 どうしたなの? 「私も一回闘ってみたいです」 …言いだすと思ったの。 大みそかの昼間、某地区の神姫センターで行われた大会の中継があったんだけど、その時鶴畑っていうふとましい子の神姫を破った神姫がいた。 マオチャオ…だっけ?、その子があり得ないほどの火器を持った騎士型の神姫に勝利したの。 分身とかリアブースターで空飛んだりとか、きわめつけは必殺技…。 うん、あれ見たら自分でもやってみたくなるのねやっぱ。 「ますたぁ、標準装備でいいですからぁ……おねがいします」 ああ、そんなかわいらしい表情と真剣な目で見ないで。萌え死んでしまうの。 「それじゃ、明日のお昼に神姫センターにいきましょうか」 「はぁい」 今思うとずいぶん平凡な会話だったんだなぁ~と思う。 いろいろあったからなぁ、今まで。 特攻神姫隊Yチーム?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/23068.html
バトルマスター軍侍 SR 火/光/闇 (12) クリーチャー:マシン・イーター/グラディエーター/ティラノ・ドレイク選手 23000 ■マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。 ■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、各プレイヤーは自身の山札のカードを3枚だけ残し、全て裏向きのままシールドゾーンに置く。その後、墓地のカードを全て裏向きにしてシールドゾーンに置く。 ■全てのクリーチャーはスピードアタッカーになり、シールドを2枚多くブレイクし、ブロックされず、バトルゾーンから離れず、コストが1になり、攻撃することができない効果はすべて無効になる。 ■誰も呪文を唱えることが出来ない。 ■Q・ブレイカー 作者:翠猫 賑やかしに効果がめんどくさいカードを。 効果は 墓地、山札のカードを2枚だけ残した全てのカードをシールドに。 全てのクリーチャーのスピードアタッカー化。 全てのクリーチャーはシールドを2枚多くブレイクする。 全てのクリーチャーはブロックされない。 全てのクリーチャーはバトルゾーンから離れなくなる。 全てのクリーチャーをコスト1で召喚できる。 全てのクリーチャーの攻撃できない効果の無効化。 呪文を唱えられなくする。 実に長ったらしい。効果欄を縮小するために「全てのクリーチャーは~」という効果を全統一したが却ってややっこしくなっている。ちなみにこのクリーチャーはQ・ブレイカーだが自身の効果でシールドを6枚ブレイクできるようになり、通常のバニラクリーチャーでも事実上のT・ブレイカーになる。 こいつが出てくると大量に展開されたシールドをお互いの戦力の限りを尽くしブレイクしまくるという地獄絵図が描かれる。 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/781.html
G・L外伝 ~Gene Less~ 外伝1 解体屋 「しっかし、なかなかセカンドに上がれないよな。まあ仕事の合間に行く位じゃこんなもんか」 「マスター、私の持つような西洋剣は、どちらかと言えば“斬る”ではなく“壊す”なんですよね?」 「ん? ああ、そうらしいな。侍型の持つ日本刀と違って、重さで斬るからそうとも言えるな。あっちの方がいいか? なら変えるぞ」 「いえ、だったらマスターのお仕事と同じだな、と思いまして。いいですよね、ああいうお仕事」 「いい仕事かねえ。きついし汚れるし、割に合わないぞ。まさかそういうのがいいのか、シビル?」 「はいっ! 親方!!」 「親方言うな親方」 瓦解、崩壊、崩落。落下轟音、大粉塵。 「うにゃぁ!?」 崩れ落ちたビル。巻き起こした土煙はにゃーごと世界を茶色に変える。視界を確保するのに大きく後ろへ飛び退く、つーか思いっきり逃げる。だって怖いんだもんあいつ! なんでにゃーより先に建物ばっかり攻撃するにゃ!? それも、も~満面の笑みで。訳わかんないにゃ!! 跳躍、反転逃避。爆砕、粉砕、崩壊。 「にゃあっ!!! 追っかけてくるにゃ~!?」 三角跳びの足場に使った家屋がどちゃっと一瞬で粉塵に飲まれる。当たり前だけど、敵は思いっきし追っかけて来てるにゃ! にゃーことマオチャオのにゃーの助は、そのなんだか良くわかんない対戦相手から逃げるだけでいっぱいいっぱい。え、マスター? 逃げてにゃいで戦えって? ムリムリムリムリ! にゃーの本能が無理って言ってるもん! いや戦うのが武装神姫だろって? そんなコト言うならマスターが戦ってみるにゃ! 「きっとヘタレはちびっちゃうにゃ・・・ってにゃぁあ~!!!」 崩壊崩落、落下、轟音。 「いたたた・・・なんでにゃーがこんな目にぃ・・・!?」 マスターと口ゲンカしてる内に今立ってた足場までなくなっておっこちたにゃ。あ、危なかったにゃ~。目の前にでっかい鉄骨刺さってるしぃ。 「早く逃げにゃいと・・・ にゃ!?」 なんと気づけばそこはステージの端っこ。もう逃げ場にゃし? そーいえばこのステージ中に響いてた破壊音がもうしてないにゃ。静かになって、ちょっとづつ土埃もおさまって来る。にゃんとそこに広がってたのはガレキだらけのまったいらな荒野。つーかサラ地。ここってゴーストタウンステージだったハズにゃーのにー? 「ぐぐぅ・・こーにゃったら少々見苦しいのも仕方ないにゃ。伏兵に忍ばせておいたぷちを結集してフクロに・・・ あれ? ぷち? オマエラどこにゃ?」 「お探し者は彼等? 駄目じゃないか、現場に子供(?)を連れて来ちゃあ」 「うにゃ!?」 声に振り向くと、そこには下僕(ぷち)たちがくるくる目を回して転がってる。逃げる途中で巻き込まれてたっぽいにゃ、しかも敵に助けてもらうなんて役立たずぅ。 「さて、解体する構造物も無くなったことだし・・」 そういって、煙の向こうから、1歩、また1歩と近付いてくる対戦者。黄色い重甲冑のサイフォス。建物を壊しまくってたのは、左手のドリルと、あと右手に持ったパイルバンカーらしいにゃ。あ、パイルバンカー捨てて、背中のなんかでっかいエモノに持ち替えてる。あれは・・ツルハシぃ? 「そろそろ・・・最後の仕上げと行きますか」 その破壊魔の足音、ひどくゆっくりと近づいて来る。 「・・けど、にゃーだって!」 跳躍、急襲、爪。 勇気を振り絞って飛びかかる。そうだ、きっと怖かったのは、相手がよく見えなかったのと、モノ壊すってヘンな行動のせいにゃ。でもそれが無いなら、理屈から言って残るのは重そーな鎧だけ。なら、あーゆーカタブツなんてすばしっこいにゃーの敵じゃにゃい! 見えるっ! 動きが見えるにゃっ!! 「反撃にゃああああ!」 「ふんっ!」 「にゃ?」 急剛投、穿孔。轟、掠。 「ドリル投げるにゃんて!? ・・でも、そのくらい!」 「隙あり!!」 轟振、打突。飛飛飛飛、子猫。逸、逸、直撃、縺絡。 「にゃあにぃ!? ・・ぶにゃ!!」 にゃんと更に、敵はツルハシでゴルフみたいにぷち達を打ち飛ばす。その内の黒ぷちがにゃーの顔面にぶち当たって視界を塞ぐ。ま、まっくらぁ・・・。 「うにゃあっ! 自分で助けといて、りふじ・・」 「問答無用!!」 剛振、粉砕。 「にゃああん!?」 歩、歩、歩、寄。歩、歩、歩、逃。 「ううぅ。にゃあぁ・・・ 来るにゃぁ・・!」 また、ゆっくりと近付いてくる、黄色いアイツ。なんとか最後の一撃は避けたけど、にゃーの爪はツルハシに壊され、武器がないにゃ。もう後ずさりする場所もないにゃ・・。 無防備で涙目のにゃーを見て、それでもにじり寄ってくるまっ黄色の重鎧。その姿はまるで・・・で・・・で・・・、う~んとえっと~なんていうんだっけかにゃあーゆーの。えっとこーノドモトまで出掛かってるんだけどにゃ~。黄色くって~、なんか重そ~で~、そんでもって色々ぶっこわしてムダムダとか言って~・・・ 「あっ! ロードローラー!」 「せめてバックホーに例えなさ~い!!」 轟打粉砕、昏倒。 『勝者、“サイフォス”シビル!!』 騒、歓声、歓声。 「親方、勝ちましたよ。ファーストリーグ初勝利です! ・・って嬉しくありませんか」 「・・・まあな」 「どうしてですか?」 「お前・・・どうして毎度相手よりフィールド壊すんだよ!? しかも今回はファーストだからリアルフィールドだって言うのに!」 「だって、親方の仕事と同じじゃないですか?」 「同じなわけあるか! 俺は仕事で壊すの! 金貰うの! だけどお前のは一銭にもならないだろ!」 「なりますよ! ファイトマネー貰えるじゃありませんか!!」 「モノ壊したのは報酬に関係ないだろう!!」 「そうです、むしろ赤字です」 「ほらこう言う人だって・・・ え?」 「私、当神姫センターのバトル運営者なんですが・・・」 「はい?」 「ぶっちゃけ出入り禁止」 「はうっ!!」 こうして破竹の勢いでファーストリーグに上り詰めた“破壊王”ことシビルとそのマスターは、初日ソッコーでリーグ参加権剥奪されるという伝説を残しましたとさ。 ちゃんちゃん。 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/482.html
・・・・・・行かなきゃいけないのかなあ。 夏休み初日、僕は起きてからずっと迷っていた。 昨日は梓に押し切られ、会う約束を取り付けられてしまったが、やはり気が乗らない。人とはあまり関わりたくないし。 その一方で、久しぶりに同年代の子と話せるという楽しみもあったし、学年内でも人気の梓と、「武装神姫」という秘密を共有している嬉しさも、あった。 ・・・・・・どうしようかな。 「あの・・・・・・」 そんな具合で考えていると、ネロに声をかけられた。 「やはり迷惑ですし、断りの連絡を入れましょう」 最初は同意した。けれど、少し考えている内に、なんとなく、違う気がしてきた。 「・・・・・・そうやってまた、今までみたいに、あんなふうに生きていくの?」 あの時見た、ネロの姿を思い出す。 「ええ、慎一や他の方々に、迷惑をかけるわけには・・・・・・」 「そんなの認めない」 彼女の言葉を遮って、僕は言った。 「少なくとも、僕は迷惑だなんて思わない。それよりも、君があんな目に遭っていることの方が、僕には我慢できないよ」 「し、しかし・・・・・・」 いったい何が僕を衝き動かしたのか、とにかく僕はネロを説き伏せ、梓との待ち合わせ場所であるセンターへ向かった。 「あ、おはよー、星野くん」 「う、うん。おはよう」 ・・・・・・しかし、開店直後に待ち合わせというのはいかがなものか。 「紹介するね、この子はミナツキ」 「はじめまして。以後、お見知りおきを」 梓の肩の上で、猫型の神姫がぺこりとお辞儀をした。 「あ・・・・・・、こ、こちらこそ」 「ネロです。どうぞよろしく」 ・・・・・・なんか調子狂うなあ。 とりあえず、出掛ける前にネロから聞いた話をいくつか、した。 彼女のメモリにはブロックがかかっており、人間でいう「記憶喪失」みたいな状態になっているらしい、ということ。 もともとのマスターが行方不明になったのが、半年前――僕はこの半年前という言葉に、奇妙な引っ掛かりを感じていた――ということ。 「ふうん・・・・・・。製造番号とか、登録ナンバーとかで、何かわからないかな?」 「うん、それも考えたんだけど・・・・・・」 身体に刻まれている製造番号は削れてしまっていたし、登録ナンバーも、彼女のアクセスコードがわからないから調べることができなかった。 「うーん・・・・・・」 梓が唸っていると、 「あれ? 梓ちゃん、珍しいね」 と、男性の声がした。 「あ、修也さん」 事情を聞いてくれたその男性――上岡修也さんは、梓の従兄らしい。 「なるほど・・・・・・。そりゃあちょっと、複雑な問題だな」 そう呟いて、修也さんは携帯電話を取り出すと、どこかに電話を掛けた。そして、 「よし、これでとりあえず、不法所持の問題はなんとかなる」 と言った。 その夜。僕のパソコンに、一通の添付ファイル付きメールが届いた。差出人を確認すると、梓からだった。携帯を持っていない(というか持ちたくない)僕は、別れ際に彼女にパソコンのメールアドレスを教えておいたのだ。・・・・・・どちらかというと、教えさせられたと言った方がいいかも知れない。 「あれ・・・・・・?」 しかし読んでみると、文面は修也さんのものだった。 添付ファイルのプログラムを、ネロにインストールしろという内容。 当面、周りの目をごまかすための、偽造データとのことだった。 「ネロ、どうする?」 僕は聞いた。 「・・・・・・インストールします。それで少しでも、慎一達の負担が減るのでしたら」 「そんなこと・・・・・・、考えなくていいよ」 「・・・・・・すみません」 ・・・・・・これは、所詮偽物でしかない。でも、今の僕とネロをつなぐ、たったひとつの綱のように思えた。 幻の物語へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/748.html
鳳凰杯・まとめページ ・このページは、橘明人とかしまし神姫たちの日常日記に端を発する 「鳳凰杯」のインデックスページです。 ・なかなかリアルタイムで乗っけていけないため、執筆者のみなさまで、 随時更新していっていただけると助かりまっす~。 @けものや 鳳凰杯 詳細設定 鳳凰杯本戦 トーナメント表 開催前日まで。。。 ぷろろーぐ 祭りの前の楽しさよ (以上、神姫の父) 燃ゆる聖杯の誘い──あるいは姫君 特殊戦闘訓練──あるいは神姫無双 前半/後半 晴れの舞台へと──あるいは内職業 (By 妄想の人) 鳳凰杯編Ⅰ 「蒼い翼」 (byぬえ) バレットエンジェル1 (幻の人) 「それは盛大な」「祭」 (チアキの人) EXECUTION-Another 02-『TimeLimitation』 (以上、穂刈) 1日目 予選の裏で祭りめぐり 揃い始めた者たち (以上、神姫の父) ちっちゃい物研・鳳凰カップ編-02 戦うことを忘れた武装神姫-28 (けものや) 恋人達の午後・「予選の裏で祭りめぐり(神姫の父)」の後の話 審査員爆誕・お菓子作りコンテスト 審査速報・お菓子作りコンテスト 花乃二重奏・予選Iグループの第三回戦 ストライカー・予選Cグループの第四回戦 剛vs剛・予選Kグループの第四回戦 (以上、優柔不断な人(仮)) 上がる緞帳──あるいは初日その一 麗しき戦い──あるいは予選その一 前半/後半 誠意の返礼──あるいは初日その二 白鳥の乙女──あるいは予選その二 前編/中編/後編 熱気の坩堝──あるいは初日その三 前半/後半 (By 妄想の人) 鳳凰杯編 「二人のナイヴスロッテ」 鳳凰杯編 「武の花の咲く頃に」 (byぬえ) 徒然続く、そんな話。 番外節、そのいち。 徒然続く、そんな話。 番外節、そのに。 (By 碧鈴の持ち主) バレットエンジェル2 バレットエンジェル3 (幻の人) 鳳凰杯への挑戦 もうひとつの戦い (以上アールの人) EXECUTION-Another 03-『LeadingDancing』 EXECUTION-Another 04-『Silhouette of Tarot』 EXECUTION-Another 05-『TaxingDismantling』 EXECUTION-Another 06-『AbsoluteTruth』 (以上、穂刈) 2日目 アルティVS葉月 『策謀家』再び 弾丸と悪魔と準々決勝と 『表』と『裏』 『緑色のケルベロス』 『α』の鼓動 (以上、神姫の父) 熱き心魂──あるいは二日目その一 激烈なる拳──あるいは決勝その一 前編/中編/後編 折り返し──あるいは二日目その二 零より来る者──あるいは準々決勝 前編/中編/後編 (By 妄想の人) 鳳凰杯編 「器創、鬼奏、姫葬・・・即ち競う」 鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」 (byぬえ) 鳳凰杯・激突!『剣の舞姫』VS『鋼帝』 鳳凰杯・悪魔の裁き (以上アールの人) 一回戦第五試合 激突!女の子?(凪版)(チアキ氏に校正して頂きました) (以上、優柔不断な人(仮)) バレットエンジェル4 騎士対弾丸 (幻の人) 注意!大会開催中に無許可のノミ屋が出没しています (うさぎなひと) 鳳凰杯篇その1? 鳳凰杯篇その2? 鳳凰杯篇その3? (byリンのマスター) EXECUTION-Another 07-『BackstageKnight』 EXECUTION-Another 08-『LastCard』 ―THE DEVIL EXECUTION-Another 08-『LastCard』―2 ―JUDGEMENT EXECUTION-Another 08-『LastCard』―3 ―THE WORLD EXECUTION-Another 08-『LastCard』―Fin ―WHEEL OF FORTUNE (以上、穂刈) そのほか(番外・企業チラシなど) ちっちゃいもの研・出展概要 ちっちゃい物研・商品案内-18? (けものや) EXECUTION-Another 01-『DefencePhoenix』 (以上、穂刈)
https://w.atwiki.jp/dqmb/pages/45.html
バトルマスターチーム 名前 効果 ビクトリー バトルマスターチーム ちから+すばやさ+みのまもり+HP360UP ちから15+みのまもり5+すばやさ2+回避率2+HP360UP ※相性記号について バトルマスターが属する以下のチームのモンスターを組み合わせる事により、能力をさらにアップできる。 ●印 草原/荒野チーム HP90UP ■印 ミニモンスターチーム HP5%UP ▲印 人型モンスターチーム ちからUP □印 モリーレンタルチーム(II) ゆうきUP 条件モンスター バトルマスター(主人公)+この中から二体 No 名前 相性 第3のワザ M-001I スライム ■ □ M-005I タホドラキー ■ M-006I ゴーレム M-007I ストーンマン たちふさがる→超・たちふさがる 物理 自分 超・代理防御 M-009I スライムナイト M-010I ミミック M-012I バル ● ▲ いしあたま→とうろう拳 物理 敵単体 打撃 M-017I ギガンテス M-020I おどる宝石 ■ M-024I スカルライダー ▲ M-025I プチアーノン ■ お遊び→水遊び 特技 敵全体 氷 M-026I マドハンド ■ 仲間を呼ぶ→マドアッパー 物理 敵全体 打撃 M-029I バーサーカー ▲ M-032I くさった死体 ▲ ひっかき→過去の栄光 物理 敵単体 打撃 M-033I おおきづち ■ ▲ M-034I オーク ● M-036I キメラ M-037I バトルレックス M-038I ヘルパイレーツ M-041I ひとくいばこ M-043I プリズニャン べろりんミスト→アイススケート 特技 敵全体 氷/物理的行動不能 M-046I メタルライダー ● M-047I ボストロール M-048I メタッピー M-051I キラーマシン2 CODE 059→CODE 101 特技 敵全体 灼熱 M-052I デンデン竜 ● M-053I 死霊の騎士 M-055I キラーマシン3 M-058I メタルキング M-059I かくとうパンサー M-061I ダークランサー しっそう毒突き→しっそう雷突き 特技 敵単体 打撃・雷/マヒ M-062I シルバーデビル ろうがのツメ→しっこくのツメ 特技 敵単体 打撃・暗黒/マヒ M-002II スターキメラ ラッシュフェザー→キメラのつばさ 特技 敵単体 打撃/バシルーラ M-003II キースドラゴン M-005II シールドこぞう ■ ▲ □ M-007II イエティ M-009II 炎の戦士 ▲ □ M-010II アンクルホーン M-012II プテラノドン M-017II あばれうしどり ● M-018II オーシャンクロー ▲ M-020II ばくだんいわ くいつく→わらう 特技 自分 わらう M-022II メーダ M-023II ゴースト ■ M-025II コドラ ■ M-027II ライノソルジャー M-029II メイジキメラ 氷の弾丸→吹雪の鳥 特技 敵単体 打撃・氷/物理的行動不能 M-031II いたずらモグラ ■ M-033II ももんじゃ ● ■ M-034II しにがみのきし ギロチン→さいごのキリフダ 特技 敵単体 打撃/マヒ M-039II コングヘッド M-040II ひとくいサーベル ブーメラン→仲間をよぶ 特技 敵単体 打撃/物理的行動不能 M-042II シールドヒッポ ● M-044II サイコロン M-045II ドラゴンライダー M-048II ホースデビル M-051II メタルドラゴン メタルブレス→ホーミングフレア 特技 敵全体 炎 M-053II クックルー ■ M-054II ドラゴンキッズ ■ M-055II びっくりサタン クロスチョップ→サタンビーム 特技 敵単体 暗黒 M-059II ドラゴンゾンビ ホネの雨→ボーンネイル 物理 敵全体 打撃/マヒ M-060II エリミネーター ▲ M-061II レッサーデーモン M-064II アンデッドマン M-066II しのどれい あびせ蹴り→ほうがんなげ 特技 敵単体 打撃 M-068II シャーマン ▲ 呪いのおどり→よびよせる 物理 敵全体 打撃 M-069II ダッシュラン M-071II きりかぶこぞう ■ ▲ M-074II グレートオーラス M-076II キャタピラー M-079II アルミラージ ■ M-083II きりさきピエロ ▲ M-085II ナイトリッチ ドルマ→暗黒ゾーン 特技 敵単体 打撃・暗黒/バシルーラ M-086II ドロヌーバ M-087II デビルアーマー ダークスラッシュ→砲撃 特技 敵単体 打撃・爆発 M-091II メタルハンター M-092II デスストーカー ▲ パワースウィング→フルスウィング 物理 敵単体 打撃/会心orミス M-095II デンタザウルス ● きあいため→ローリングソーサー 特技 敵全体 打撃・炎 M-097II さそりばち ニードルラッシュ→スタンニードル 特技 敵単体 打撃/マヒ M-098II ゴールデンゴーレム M-101II スライムタワー M-001V キラーリカント 毒手→テンションカウンター 特技 敵単体 カウンター/テンションアップ M-002V 影の騎士 M-003V 悪魔の騎士 M-004V アトラス M-005V バズズ M-007V だいまじん ● だいしんどう→ボディープレス 特技 敵全体 打撃 M-009V トロルキング M-013V ジャミ M-015V ゴンズ メッタ斬り→爆裂の舞 特技 敵単体 打撃・爆発 M-017V まおうの使い ● 烈 四刀流→滅 四刀流 物理 敵単体 打撃/1~2回攻撃 M-018V ドランゴ M-019V オーガキング ▲ シールドバスター→キングストレート 物理 敵単体 打撃 M-026V アイスビックル ▲ 圧倒的なタフネスと攻撃力を持つ職業。状態異常耐性も悪くはない。 仲間しだいでは呪文も使えるようになる。 武器や装備で力が上がることが多く、素の力は劣っていても相対的な力は戦士よりも上になる。 しのびのふくの効果もあるため、装備次第では呪文にも耐えられる。 相手として出てきた時、力で押し切られたら大変だ。呪文を中心に押し切ってやろう。しのびのふくを装備していたら、少しでも効きやすい状態異常で行動不能にして、とどめの一撃を狙おう。 竜王のツメと魔人の鎧着せたら身の守りが340になった。そこにチーム&おしゃれ着効果で身の守りがなんと475に。そこに勇者75のかいふくを当てたところ、メタハン45ダメージに対してなんと23ダメージ。低っくwww -- (カケル) 2010-08-02 22 11 38 デビルアーマー -- (popopop) 2010-08-03 16 32 02 ↑デビルいいかも -- (ghjhgjhgf) 2010-08-03 16 33 41 勇者より強いじゃん -- (名無しさん) 2010-08-08 07 24 58 バトマス3果実 悪魔の騎士 バズズの6回攻撃チームは非常に強力ですね。まあ、このチームで勝って喜べるかどうかは己次第ですが…。 -- (もーもん) 2010-08-22 15 44 41 ↑SPで隼のけんつかったらやばいことになる -- (ナナシノゴンベイ) 2010-08-22 19 13 26 私は使った事ないですが、デンタ キラーリカントと組んだバトマスを最近Wi-Fiでよく目にします。あたった相手はすべてはやぶさの剣改持ちで、2T目につばぜりを仕掛けて、3•4T目に光の玉で勇気を貯めて、5T目にとどめの一撃という戦法を対戦相手全員がしてきました(ちなみに私はつばぜりにすべて負けてしまった。黄色MAXで連打も完璧だったのに…)このチームの勝利の鍵は「つばぜり合い」が握ってますね。 -- (もーもん) 2010-09-12 18 14 00 だいまじん デンタと組むと、HPが凄いことに! -- (もーもん) 2010-09-22 01 05 44 がおbghdgxggggggggxxxxdgfxf -- (hjbんjhj0-) 2011-01-09 15 35 07 はやぶさの剣改+まおうの使い+キラーリカントのデッキで、2ターン目光の玉をいれて、上手くいけば3ターン目にとどめの一撃うてる -- (ナイト) 2011-07-15 18 28 04 名前 コメント すべてのコメントを見る ※ここは質問掲示板ではありません
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/300.html
凪さん家の弁慶ちゃん 「まずいわね…」 ここは私立黒葉学園、高等部校舎の三階、階段踊り場。 「…何が…?」 壁にもたれかかっている男が聞き返す。 「まずいじゃないの」 踊り場の窓から外を見ながら答える女。 「だから何が…」 再び聞き返す男。その肩には小さな少女が佇んでいる。 「何がって決まっているでしょ?」 若干焦っているような声色で答える女。その肩にも小さな少女。 「…わかりやすく言え…」 呆れたように訊く男。 「まずいわ…即戦力が必要よ…」 腕を組みながら考え込む女。 「なんの…?」 明後日の方向を見つつ訊く男。 「はぁ~。あのねぇ?それはもちろん…」 女はやれやれといった表情で言い放つ… 「この私立黒葉学園神姫部のよ!!」 第一話【求む!君の力!】 静まり返る踊り場。 「…まぁ、まだ「部」じゃないけどな…」 「う、うるさいわね!」 「むしろ同好会なのかすら怪しい」 「うるさいってば…!」 「まぁまぁマスター」 と、今まで黙っていた小さな少女。女の肩に乗っていた一人が口を開いた。 「何よアーサーまで~」 「いえ、反論しているわけではないですよ?」 「まぁ、それはわかってるわよ…」 「…同好会の申請をしてから一ヶ月以内に五人集まらなければ解散…か…」 男が呟く。 「そうよ。で今四人揃っているわ!」 「でも必要人数は五人…期限は明日まで」 今まで黙っていた男の肩に乗っていた小さな少女がぼそりと言う。 「もう誰でも良いから数合わせに入れたら良い…」 「それじゃ駄目よ!欲しいのは即戦力よ!クラスはセカンド!もしくはそれに準ずるポイント獲得者よ!」 「高校でセカンドなんて中々いないだろうに…」 「そうよ!だからサードの上の上でも良いって言ってるじゃない!」 「ほとんど同じだろ…」 「うるさいわね~今集まったメンバーを見なさいよ! 四人中私とあんたとあいつがセカンド、あいつの妹がサードの上位! ここまでこだわって集めたんだから、いま諦めたら後悔後の祭りじゃない!!」 「だから人が集まらないんだろ?」 「ぐ…」 「…とりあえず…それはいいから神姫センターに行ってポイント稼ぎでもしよう…」 「と、とりあえずとは何よ!」 「それに…」 「…?何よ」 「今からなら学校帰りの奴らが参戦しているかもしれないだろ…」 「…あ、なるほど…よ~し!絶対スカウトしてやる!!」 「はぁ…」 男はため息をついた。どうしたものやら…と。 「いけ!弁慶!!」 「…うん」 広大なバトルフィールド。 荒野を駆ける神姫が一体。 対するは地上を滑るように飛行する神姫。 弁慶と呼ばれた神姫は大地を蹴り、一気に跳躍する。 その右手には巨大な塊。それは【セブン】と呼ばれていた。 【セブン】とはその名の如く、七つの装備が合わさった弁慶が使用するカスタム武装である。 この【セブン】はAM社のパイルバンカーをベースに様々な武装で構成されている。 その装備は一番から 1.パイルバンカー 2.キャノン砲 3.ガトリング砲 4.2連装ビームバスター 5.ミサイルランチャー 6.手榴弾ポッド 7.光の翼 で構成され、状況に合わせて武装を選択、もしくは組み合わせることによって数々の戦局に対応可能にした万能装備である。 しかしその装備重量は通常の武装神姫用装備と比べ、はるかに重く、普通に使用するだけでも多大な苦労を有する。 だが、そんな武装をぱっと見軽々と扱っていられるのは七番目の武装【光の翼】という補助推進システムのお陰である。 逆にこれが機能しなかった場合は単なるカウンターウエイトにしかならないであろう。 地上を駆ける弁慶も、この【光の翼】をたくみに使用して【セブン】を制御している。 これの使い方を理解していない普通の神姫にとっては【光の翼】を使用してもこの巨大な代物を制御するのでやっとで、満足に扱う事はできないだろう。 この【セブン】を満足に扱えるのはマスターの凪千空と共に設計した凪千空の武装神姫、犬型ハウリンがベースの弁慶のみ。 そういう意味では単純に使うだけ、持つだけならなら誰でも出来るこの【セブン】も事実上は弁慶専用の装備と言えるだろう。 そんな弁慶は今日、後一勝でセカンド昇格をかけた試合に赴いていた。 「飛んで!弁慶!」 「…うん」 相手の大型ビームをジャンプで回避、セブンに装備された光の翼を使用して空に浮いた状態から横へ移動。 さっきまでいた場所はビームによって焼かれていた。 「今日は絶対勝つんだから!」 「…うん…!」 「三番で牽制、五番で包囲、七番使用で接近して一番!」 「…わかった…!」 弁慶は相手に対し三番のガトリングを乱射。命中が目的ではないので標準は適当。 「…いけ…」 発射されるミサイル群。しかし相手の移動速度は凄まじい。 「速いなぁ…」 「ミサイル追いつかない…どうする…?」 「ん…よぅし、ミサイルに気をとられているうちに七番で最大加速しよう!そして一番!」 「…言うと思った」 「えへ」 「…ふふ」 やっぱり弁慶は凄いなぁ。言ってる途中から言おうとした行動を実行してる。 「…突撃…!」 広がる翼、その瞬間弁慶の姿が霞んで消える。 狙うは相手の神姫。マオチャオに大型のブースターを多数装備して機動力を向上させているみたい。 「…はぁぁぁ…!」 弁慶が一番、パイルバンカーを突き出す体制に移行する。 「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」 相手の斜め後方から一気に突貫する弁慶。でも 「あまいの!」 「…!」 相手マオチャオが急激に方向転換。 ぐるりと一回りしたのち、背部ブースターがその回転によって質量攻撃となり、偶然なのか狙ってなのか…接近しすぎた弁慶に打ち付けられる。 「…くぅ…!」 ドガァァァァァン!! セブンで何とか防御するもはるか遠くへと吹っ飛ばされる弁慶。 そのまま盛り上がった岩の壁に激突する。 「大丈夫!?」 僕は思わず叫ぶ。 「…痛い…でも平気」 岩の瓦礫の中から立ち上がる弁慶。 「注意して!」 次が来るかも!! 「…もうしてるよ」 光の翼を再び展開させて飛び上がる弁慶。 「…どこ…?」 「いない…?」 上空から索敵する。もちろん的にならないように小刻みに軌道を変えて。 「ここだよ!」 「…!」 いきなり下から声。 「弁慶!」 「…わ…!」 下方からのクローアッパーが弁慶を襲う。 弁慶はそれを何とか回避、でも 「ぐぅ…!?」 あるはずのない背中からの衝撃。その衝撃で地面に落下、そのまま激突する。 「な、なに…?」 よろりと立ち上がる弁慶。 「弁慶!右!いや左…え、えぇぇぇぇ!?」 「千空?なに??…え…何だこれ…」 僕達は驚くしかなかった。だって… 「ねぇ、なんかマオチャオがいっぱいいるように見えるんだけど…」 「うん…そう見える…」 弁慶の周囲にはブースターを排除した相手マオチャオがいた。 いっぱい…。 「「??????」」 「いくの!」 と相手マオチャオがう動きを見せる。時には一人、時には二人、三人四人と増えたり減ったり。弁慶の周囲をめまぐるしく動いている。 「え…。うあ…!」 正面からの爪が弁慶にヒットする。次は右、後ろ、左と思わせてまた前…四方八方からの攻撃を受ける弁慶。この状況じゃセブンは盾にしかならない。 「ぐ、あ、わにゃ、くぅ…」 「え、~と…!?」 焦る僕。ええと、こんなの初めてなんだけど~!! 「落ち着け千空…まだ大丈夫…」 「…弁慶…。良ぉし!!七番最大!あれ使っちゃうよ!!」 「…わかった…!」 光の翼を限界起動させる。紅く輝く翼が弁慶を包む。 「にゃ!?」 一瞬ひるむマオチャオ。 「今だ!弁慶ぇ!!」 「…うん…!!」 一気に飛び上がる弁慶。その高度はステージの上昇限界まで達している。 そして今度は一気に急降下。内臓火器を一斉発射して周囲を爆撃。 ガトリングが鋼鉄の雨となり、ミサイルの渦が嵐を呼ぶ。その雲の合間から煌くビームランチャーの光と流星の如く降り注ぐキャノン砲の追撃。おまけに手榴弾ポッドの隕石がマオチャオがいた周囲に降り注ぐ。 これらは当たらなくても良い。当てるのは一つだけで良い! 「わ、わわわぁぁぁ~!!」 いきなりの災厄に驚くマオチャオ。 響く爆音。その時、何の影響かはわからないけれどたくさんいたマオチャオが消えて、一人になった。 「…ラッキー!見えたよ…!」 「…そこ!!」 「え、うそぉ!?」 「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」 後は突撃あるのみ!持ち方を変えてパイルバンカーを準備! 僕と弁慶の二人の声が合わさってその名を叫ぶ。 「「七つの混沌(セブン・オブ・カオス)!!」」 ドッゴォォォォォォォン!! パイルバンカーの射突音がステージ内に響く。 「やった…??」 バチバチ… 「……く…」 弁慶の苦い声。 「浅い…の!」 とたんマオチャオの声が響き閃光が走る。それと共に辺りを覆っていた硝煙が吹き飛んだ。 「ねここぉぉ!フィンガー!!!」 「…ぐ、あぁぁ…」 弁慶の苦しそうな声がインカムに響く。 「弁慶!」 弁慶を包む凄まじいスパーク。その出所であるクローは弁慶の腹部に突き刺さり、その体を貫いていた。 「すぱぁく、えんどぉぉぉぉぉぉ!!!」 「くぅ…!!」 一気に閃光が強くなり弁慶が黄色い光に包まれる。 「弁慶!!」 光がやむ。その体から爪が引き抜かれ、ドサリと崩れる弁慶。 「弁慶!!弁慶!!」 「やったの!…え」 勝利を確信するマオチャオこと、対戦相手のねここちゃん。でもその表情が変わる。 「…ぐ…ぅ」 ぐらりと立ち上がる弁慶。セブンを支えにしてキッとねここちゃんを睨む。 さすがに驚いた。 「べ、弁慶…?」 「…はぁ…はぁ…」 ずりずりと体を引きずりながらもなおねここちゃんに接近する弁慶。 「だ、駄目だよ!動いちゃ!」 思わず気遣うねここ。 「…うるさい…まだ負けてない…」 「弁慶!もう良いよ!ねここちゃんの言う通りだよ!」 「…千空…勝つって言った…だから嫌だ…」 「はぁぁあぁぁ~!」 セブンを大きく振りかぶる弁慶。 あまりの威圧にねここちゃんの動きが固まる。 「サド…ン…インパクト…!!」 ドッカァァァァンン!! 響く炸裂音。その鉄槌は当初狙っていたであろう腹部から大きく外れ、ねここちゃんの左肩を掠っただけだった。 それが最後の力だったのかよろけて倒れこむ弁慶。 その瞬間 『試合終了。Winner,ねここ』 ジャッジAIの機械音声が合図を告げた。 「弁慶…」 「…」 マシン内でうなだれる弁慶。 「弁慶?」 「…ごめん…負けた…強かった…」 「うん、強かった。でも弁慶も良くやったってば」 「でもセカンド上がれない…」 「そうだね…セカンド昇格はねここちゃんだね…さすがって感じ」 「…ごめん…駄目な奴で」 「そんな事無いよ!」 「千空…」 「追いついて勝てば良いんだよ!ほら、前負けてから五連勝だよ?だから次は六連勝だって!」 「千空…うん…今度は負けない…あ…」 「ん?」 「駄目だ…」 「え?」 「セブンが…」 「…!」 あらら、完全にショートしてる…。セブンは戦闘システム直結型だから…内部ダメージが限界を超えたかぁ…それとも無茶な強化が祟って寿命がきたかな…。 「ごめん…」 「いいって、また二人で作ろう?」 「千空…」 「もっと強いの作っちゃおう!!」 「…うん…うん!!」 「じゃ、早速帰って製作開始だよ!」 「うん!!」 「どう?」 ねここ対弁慶。その試合映像を見ていた女が聞く。 「良いんじゃないか?」 男が答える。 「そうよね!!間違いないわ!!」 女は意気込んだ。 「さぁ、どうしよっか?」 「…うぅ~ん」 僕達はセブンについてあれやこれやと考えながら帰路につこうとしていた。 そんなセンターの入り口に人影。 「ちょいとそこの君君!!」 「?」 振り向くと女の人と男の人。あ、制服がうちと一緒だ…て事は黒葉学園の生徒? 「そう!君!!」 女の人が僕を指差す。 「その制服は黒葉学園の制服!つまりは生徒!そして神姫所持者でランクはサード上位!!」 「へ、あ、はい…」 僕と弁慶はきょとんとしていた。 「求む!君の力!!黒葉学園神姫部に来なさい!!」 「え、えぇぇぇぇぇぇ~????」 いきなり出てきてこの人は何なんだろう…神姫部?そんな部活あったかな…? そんな僕の疑問を尻目に、僕と弁慶の、神姫を取り巻く世界は確実に動き出した。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/970.html
前へ 先頭ページへ 朝。 朝が来た。 マスター風に言うならば清々しい朝。もしくは、爽やかな朝。 とにかく、私は内蔵された自動起動機能によって目を覚ました。 起きたからにはやる事がある。 ベッドであるクレイドルから上体を起こしての状況確認。 玄関―――朝刊が届いているのを確認、鍵もチェーンもかかったまま。異常無し 窓―――カーテンの隙間から天気を確認。予報通り快晴。鍵も閉まっている。異常無し。 ちゃぶ台―――マスターの財布を確認。休止前との異常は検出されず。異常無し。 ベッド―――マスターが眠っている、今のところ異常無し。 時刻―――現時刻、午前7時30分。講義開始が午前9時30分。マスターの行動予想。このまま起こさない場合の起床時間、9時。 行動、開始。 私はぴょいん、とクレイドルから飛び降りる。クレイドルはマスターのベッドの枕元に置いてあり、飛び降りた先はマスターの顔の直ぐそばだ。 何時もは気難しげな表情をしているが、この時だけはいつも穏やかだ。まるで死んでるみたい。 ……心なしかマスターに睨まれた気がする。次は潰されそうだから本来の仕事に移るとしよう。 ベッドの隅に立てかけられた30cmの鋼尺、それを両手で抱えるように持つ。 人間からしたらそれ程でもない重量だろうが、神姫である私からしたら結構な重量を感じるそれを、肩に担ぐように構える。 そして、腰を軸に上体を回転させる。 「―――ッ!」 ばこん、という音と共にマスターが飛び起きた。 頭を押さえて涙目でこちらを見ている。 その視線を受けながら、私はこう言うのだ。 「おはようございます、マスター。今日も良い天気ですよ」 それが私の日課。 武装神姫、ナルの一日の始まりなのだ。 今日も今日とて大学へ向かうマスター。 そしてマスターの胸ポケットの中に納まる私。 マスターが一歩歩くごとに身体が数cm程上下する。 これが人間換算だった場合、人は酷く酔ってしまうと聞いた事がある。 全てを人間に準じて作られた私がそうならないのは機械的に制御が成されているからか、それとも個体差なのだろうか。 そんな事を考えていると、空が翳った。 「……ハトか。珍しい」 マスターが呟いた。 人には聞こえそうもない小さな呟き。しかし、私の耳はそれを捉えた。 それは私の聴覚が人間よりも優れているという点もあるが、マスターの身体から声の震動が伝わったというのもある。 「このご時世、こんなところで鳩を見れるとは思いませんでした」 私は率直な感想を言った。 私に内蔵されている基本データの鳩に関する項には2036年現在、鳩の生息数が激減しており、絶滅危惧種一歩手前であると記されている。 そして、日本で野生の鳩が生息しているのは浅草だけだとも記されている。 ここは浅草から少し距離がある。飼われた鳩にしろ野生にしろ、少々貴重な体験だと言えた。 「餓鬼の頃はそこそこ見かけたんだがなぁ」 そう言うと、マスターは空を仰いだ。 その表情を窺い知ることは出来ないが、きっと私の知らない遠くを見ているのだろう。 私がマスターと出会ってもう5年になる。 この5年間、色々な事があった。 だけど、まだ私はマスターの全てを知っている訳ではない。 マスターが見たもの、マスターが感じたもの、マスターが知ったもの。 私が知らない、マスターの要素。 マスターという人間を構成するピース。 それを、私も共有する事が出来るのだろうか。 「……暇があったら実家にハト探しに行くか」 さっきよりも小さな声、だけど、はっきりとした声でマスターが言った。 その視線は真っ直ぐ前を向いている。 だけど、私にはその先にあるものがわかる気がした。 「楽しみです」 大学は、目と鼻の先だった。 今日の講義は一限から五眼までフルに入っている。 一限目は工業数学。マスターが最も苦手とする教科で、マスターは今にも死にそうな顔をしている。 私はというと、教室の机の上にぺたりと座り、周囲を伺っている。 この教室はそれほど広くは無く、人と人が接触しやすい。周囲を見れば3,4人のグループで固まってるのが殆どで、一人で難しそうな顔をしているマスターは少し浮いている。 元々人づき合いが良い方では無いので、大学内の友人は研究室の方くらいしか見た事が無い。 他愛無い雑談のざわめきの中、マスターは一人教科書を睨んでいる。 少しでも頭に入れておかないと刺されたときマズイそうだ。 暫くして、教授が現れた。その瞬間に水を打った様に静まり返る様は何時見ても面白い。 講義が始まった。 教授は説明を交えながら黒板にチョークを滑らせている。生徒はと言えば、黒板の例題や問題を写し、それを解く為に頭を絞っている。 無論、マスターもその一人だ。 シャーペンをくるくる回しながら、左手で頬杖をしている。その眼はノートに突き刺さっており、とても鋭く、険しい。 暫く微動だにしなかったマスターだが、目だけが動いた。 その先にいるのは、私だ。マスターの言わんとする事は手に取るように分かる。 確かに私は機械の類だ。計算は得意中の得意。朝飯前だ。 しかし、だ。 「マスター、こういうのは自力でやらねば意味がありませんよ?」 マスターは苦虫を噛み潰した様な表情をし、再びノートを睨んだ。 何事も経験ですよ、マスター。 講義を終えたマスターは随分と憔悴している様に見える。 覇気が無いというか、精気が無いというか。とにかく元気がない。 マスターの胸ポケットの中で揺られながら私はそう思った。 しかし、それも仕方ないのかもしれない。 その理由は次の講義がマスターの苦手科目No.2、文章演習だからだろう。 この講義、平たく言えば作文の講義なのだが、マスターは文字を書くとか本を読むとかそういう類の事が大の苦手なのだ。 レポートにおいてもそれは健在で、毎回必ず再提出の烙印を押されている。 そういう訳でマスターはこの講義が苦手という訳だ。 重々しい足取りで教室移動をするマスターは、さながら亡者だ。 瞬間、身体に衝撃が走った。突然の事だが、頭は冷静に動いている。 とりあえず、私の身体は空中にある。身体は一回転していて、頭から真っ逆様に落ちる格好だ。 とりあえず状況を確認すると、マスターが尻餅をついていて、その上に人が覆いかぶさっている。 マスターは後頭部を押さえていて、覆いかぶさってる人間はぐったりとしているのが上下逆さまに見える。 「…わわっ、大丈夫ですか~!」 何ともマヌケな声が聞こえてきた。 その声の主はマスターに覆いかぶっている人間だ。 「いいから、どいてくれ」 マスターが不機嫌そうに言った。それを聞いたその人はあたふたしながらやたら危なっかしくマスターの上からどいた。 それは女の人だった。 そして、床と私の距離はもう無い。ぶつかる。 何時もなら直ぐに体制を立て直す事が出来るのに、反応が遅れた。どうしよう、とか思ってたら、 「……ゎっ」 思わず変な声が出た。それは身体に慣性の力が働いた事による反作用だ。 視界は未だ上下逆転したままだ。前髪が床についている 足首を見ると、誰かに掴まれている。 白い手、白い腕、白い身体、白い髪。 「……ストラーフ?」 思わず疑問が口に出た。だって、そこにいたのは白い神姫。 白い神姫と言えばアーンヴァルな訳だけど、その顔はどう見たって私と同じ顔。ストラーフなのだから。 しかし、このストラーフ無表情である。目が合っているのにあちらさんは瞬き一つしないで私をじっと見ているのだ。 なんて事考えていたら、彼女は唐突に私の足首から手を放した。 手を付いて一瞬逆立ちの体勢、今度は身体全体を使ってくるっと周る。よし、上下正常な世界だ。 私は改めてストラーフを見た。私は量産機なので私と同じ顔を見るのは少なくない。その中には様々なカラーバリエーションのストラーフがいたが、ここまでまっ白いストラーフは初めて見た。 「わ、私ぼー、としてて、その、あの……」 頭上からマヌケな声が降ってくる。その声の主はマスターに対し平謝りだ。 「……今度から気を付けてくれ」 マスターはバツが悪そうに言うと、私を拾い上げた。 「大丈夫か?」 「あのストラーフのお陰で」 私はマスターの手の中、視線をあのストラーフへと向けた。 そのストラーフはマヌケな女の人に抱きかかえられている。 マスターの逡巡する気配が漂った。 「……名前を聞いても良いかな?」 その視線はマヌケな女に人に向けられている。 当の本人は、一瞬ポカーンとした後、金魚みたいに口をパクパクさせている。 かと思えば大きく深呼吸をし始めた。3度深呼吸をした彼女はようやく口を開いた。 「えと、その、わた……私、環境心理学科の、君島、です」 まるで息も絶え絶え、死にそうな様子で君島さんとやらは言った。 「それで、この子は、アリスって、言います」 そういって胸に抱える白いストラーフ、アリスを一瞥した。 しかし、このアリスとやら、マスターである君島さんと違い本当に無表情だ。 「僕は倉内 恵太郎。君島さんと同じ環境心理科です」 マスター自慢の猫被りが発動した。さっきまでの不機嫌ぷりは何処へやら、今は完璧な爽やか系好青年だ。 「この子はナル」 「どうも」 私は軽く会釈した。 「アリスちゃん、僕のナルを助けてくれてありがとう」 マスターの言葉を無表情で受け止めるアリス。それに対して君島さんはやたらおどおどしている。ここまで来ると面白い。 「……いい」 アリスがようやく口を開いた。にしても驚くほど無機質な反応だ。……CSC入ってないんじゃないだろうか。 その時である、場違いな声が響いたのは。 「おはよう! けーくん!」 どっから顕れたのか、孝也さんがマスター目掛けて飛び付いてきた。 「おはよう……っと!」 そしてマスターは孝也さんの顔面に右フックを叩き込んだ。 孝也さんは派手な音と「ぐべぇ」みたいな呻き声を上げてゴミ箱に突っ込んじゃった。 「ふぇ?…え? え?」 案の定、君島さんが目を白黒させている。 「ああ、いつもの事ですよ」 マスターは相も変わらず爽やかを装っている。 「そう、僕とけーくんのスキンシップは何時でも過激なんだ……」 何時の間にやら孝也さんがマスターの傍らに寄り添っている。相変わらず復活が早い。 「そ、そう、なんですか」 駄目だ、完全に怯えている。 「マスター」 「……じゃあ、次の講義がありますんで僕はこれで」 私の言わんとする事が伝わったようだ。 マスターは孝也さんの首を鷲掴むと、笑顔で歩き始めた。 「ところでけーくん、今の人は? ……けーくん、首が痛いよ~。……けーくん、絞まってる! 何か凄い締まってるよ!? 何! 僕が何かした!? 嫌だ! 離して! 話せば解る!……アーーーッ!」 残された君島は暫し茫然としていた。 まるで嵐のような出来事に頭の処理が着いて行っていないのだ。 「……ましろ」 「ふゃいっ!?」 普段は全くの無口&無表情なアリスが君島を、君島ましろの名を呼んだ。 その事に君島は飛び上るほど驚いた。自分の神姫なのに。 「……紅」 一言。言葉ではなく単語。 アリスのその短い説明でも、君島はすぐに理解出来た。 「あ、あの人が、そう、なの?」 口調は変わらない。しかし、その目の鋭さは先ほどまでの少女とは到底思えない鋭さだ。 その鋭い視線を恵太郎が去って行った方向へと投げかける。 見えない何かを見るように、見えない何かを値踏みするように。 「じ、じゃあ、やっつけなきゃ、あの人」 まるで近くのコンビニに買い物に行くような気軽さ。 反して、命を賭けた血戦に赴くような切迫さ。 奇妙で歪んだその少女の名は君島ましろ。 ましろを知る人間は彼女をこう呼ぶ。 白の女王、と。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1099.html
交差点の向こうに走り去る少年の背中を見て、男は静かに呟いた。 「……行っちまったか。峡次のヤツ」 腫れ上がった頬をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。全力で山ほど殴られた所為か、まだ頭にはわずかに揺れる感覚が残っていた。 「何とかなる……と思いたいですけれど。あの子も一緒ですし」 引き抜いた刃を白鞘に納めつつ、サイフォスタイプの少女は肩をすくめてみせる。 峡次がオーナーに向かって駆け出したとき、彼女は彼からしっかりと飛び離れていた。その代わり、鳥小に投げられて倒れ込んだ彼の元には、一番最初に駆け寄っていた。 「そうでないと、困るけどな」 辺りを見回しても姿が見えないから、今もきっと一緒にいるはずだ。 たぶん。 少々反応の鈍い娘だから、途中でふり落とされてなければいいけれど……と、少女は心の中で祈りを捧げた。 「……オーナー」 「俺もちょっとはしゃぎすぎたよ。悪かっ……」 オーナーと呼ばれた男は、自らの巨躯を腕一本であっさりと投げ飛ばした少女に笑いかけ。 「たね、じゃねえっ!」 その笑顔を貼り付けたまま、肩から来た衝撃に横殴りに吹き飛ばされた。 再び二転、三転して、容赦なくアスファルトに沈むオーナーの巨体。 「店の前でケンカするのが店長の仕事かっ!」 その前にそびえるのは、鉄塊を削りだしたかのような大剣を右手で突き、緑の髪を右側で結んだ、ツガルタイプだ。 その剣の如き視線。炎の如き怒り。十五センチの小さな体は、今は十五メートルに匹敵する威と圧を併せ持つ。 「ア、アキさん……」 鳥小はおろか、身長二メートル近いオーナーでさえ、彼女の前には言葉を失ったまま。 「なにやってんだお前ら! そこ座れ! そこ!」 「は、はいっ!」 鳥小、オーナー、サイフォスの娘。 それに加えて、騒動の成り行きを見守っていた客の少女とその神姫もがアスファルトに正座する。 「ウチが何の店か、忘れちゃいねえよなぁ? 鳥小」 「……ドールショップです」 背中にかかる『真直堂』の看板には、控えめだがしっかりと「ドール取り扱い」と記されていた。 「それから!」 「……神姫の仕事斡旋所です」 大きな体を縮こまらせて呟く、オーナー。 看板の上にある窓からは、二十を超える神姫達がひしめき合うように顔を出していた。 二階の縫製所で働いている、アルバイトの神姫たちだ。 「ウチで預かってるお嬢様がたが、変なこと覚えちまったらどう責任取るつもりだ? あぁ!?」 一番悪影響を与える存在は、目をつり上げているツガルだろう……とその場にいる誰もが思ったが。 それを口に出せるものは、誰一人としていなかった。 マイナスから始める初めての武装神姫 その7 後編 涙でにじんだ角を曲がり。 裏路地の段ボールを跳び越えて。 息を切らせた苦しさは、大通りの直線を加速して紛らわす。 人ごみで肩がぶつかって、後ろから罵声が聞こえてきたけど……吐き出す息の音で、無理やりにかき消した。 肺が痛い。 腕が痛い。 足が痛い。 喉が痛い。 目が痛い。 頬が痛い。 背中が痛い。 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。 その痛みで、もっと痛いところの痛みと混乱を強引に上書きして。 俺は秋葉原の街を全力で駆けていく。 「…う……ぁ……」 また誰かにぶつかったのか、女の人の声。 ごめん、と心の中で謝って、俺は速度を緩めない。 「…じ、さぁ……ん」 また? 酸欠気味で頭がクラクラしてるから、体の感覚も怪しげだ。けど、それでも肩や腕にぶつかった感触くらいは残るはず。 そういえば、さっきの声がしたときもぶつかった感じはしなかった。 「きょ……さぁ……」 ……あれ? 罵声じゃない。 俺の名前を呼ぶ声だ。 「峡次……さぁん……」 ……まさかと思いながら歩を緩めてみる。 背中に伝わってくるのは、俺のシャツの裾から伝わる妙な重み。 手を伸ばせば、小さな体がぶら下がってる。 「……ノリ!?」 ちょっと待て! 俺は慌ててノリの体をすくい上げ、人の来ない歩道の隅へ移動する。 「や、やっと……気が付いてくれたぁ……」 俺の手の中にへたり込んで、息を切らせてる小さな体。 「ご、ごめん。大丈夫!?」 こいつ、全力で走る俺の裾にずっと掴まってたのか。 「は、はぁ……何とか」 バイザーを閉じたまま、ノリは力ない笑顔でそう答えてくれた。 ……バカ。俺のバカ! 広いお寺の境内で……お寺っていう建物を初めて見るので、ホントは広いのか狭いのかは良く分かりませんでしたが……峡次さんはベンチに腰を下ろして、膝の上にわたしを乗せてくれました。 肩の上だと横顔しか見えなかったけど、ここからだと峡次さんの顔がちゃんと見渡せます。 「ほい、ノリ」 元気のない様子の峡次さんが差し出してくれたそれは、さっき入口の売店で買っていた白いクリームの塊でした。そっと口を近付けてみたら、クリームの感触よりも先に、冷たい空気が唇に触れて。 「冷たぁい」 触れたクリームは、その空気よりも冷たいのに、今まで触った何よりも柔らかくて。 舌を出してみたら、そのまま舌先ですくえちゃいました。 「美味しい?」 甘くて、冷たくて。 「はいっ! とっても!」 確か、売店の看板には『ソフトクリーム』って書いてあったっけ。 「そっか」 峡次さんはわたしの口元に付いたクリームを指先で拭って、少しだけ笑顔。そのまま口を大きく開けて、クリームの山の半分をまとめて削り取りました。 あ……。 ソフトクリーム、もっと食べてみたかったけど……峡次さんのぶんを分けてもらったんだから、もう我慢です。峡次さんはわたしの何十倍も大きいから、何十倍も食べないと同じ『おいしい』にならないんですから。 「………?」 けど峡次さんは、そんなに美味しそうじゃないみたい。ソフトクリーム、嫌いなのかな? 「ごめんな。変なところ、見せちゃって」 それが、さっき店長さんと戦ってたことだって思いつくまで、少し時間がかかりました。 「いえ……。あの店長さんは?」 少なくとも、わたしの『一般常識』のライブラリには、初対面の人と殴り合うあいさつの仕方は載ってません。地方の風習まではフォローしてないから、峡次さんはそういう習慣のある所で生まれたのかもしれませんけど。 「……兄貴」 えーっと、兄貴=お兄さん。同じ親から生まれた年上の男……って。 「そ、そうなんですか?」 お兄さんとは、殴り合うのがあいさつの仕方なんでしょうか? わたしには姉妹はいないから、良く分かりません。 でも、ベルさんやプシュケさんとは殴り合わなかったです。それとも、さっきの戦闘は神姫バトルに相当するコミュニケーション行為なんでしょうか……? 途中で鳥小さんも参戦してましたし。 「ああ」 ソフトクリームの下の、茶色いところをパリパリと食べながら、峡次さん。 あ、あの……そのパリパリも、食べて……。でも、峡次さんのだから、ダメだよね……うん。我慢、我慢。 「結構、凄い人だったんだぜ? 大学の研究室で、CSCの開発に関わったとか、神姫の素体の研究をしてたとか……」 CSCはわたしの胸に入ってる『心』の部品。 素体は、この体のこと。 っていうことは、峡次さんのお兄さんは……。 「じゃあ、わたし達の生みの親……?」 「……どこまでがホントかは知らないけどな」 峡次さんは楽しく無さそうな笑い顔を浮かべると、手の中に残った三角の紙をくしゃりと丸めて、隣のゴミ箱へ。 さようなら、ソフトクリームさん。おいしい思い出をありがとう。また、会えます……よね? 「ただ、神姫や武器作りの腕は本物だった。兄貴のハウリン……クウガは、俺が知ってる中じゃ最強の神姫だったしな」 クウガさんっていうのが、お兄さんのハウリンタイプの名前みたい。 第二期モデルの犬型神姫・ハウリン。砲戦特化のわたしとは対照的なコンセプトを持つ、オールラウンダータイプの汎用神姫。 特化した能力はないけど、銃や砲撃だけじゃなくて、剣も格闘も何でもこなせるスゴい子です。 「なら、何でそんな人にキックを……?」 峡次さんは、そんなお兄さんのことが大好きなんでしょう。クウガさんの名前を出した時の峡次さん、ソフトクリームを食べた時より嬉しそうでしたし。 「……さっきの店、見ただろ?」 寂しそうな問いに、わたしは小さく頷きました。 真直堂、ですよね。ちょっとしか見えなかったけど、可愛い服が沢山あって、すごく楽しそうなお店でしたけど。 「何か、腹が立って来ちゃってな。神姫界最速の神姫のマスターが、技術屋どころか何でドールショップなんかやってるんだって……な」 「……峡次さん」 その言い方がすごく怖くて、わたしは思わずバイザーを閉じました。 ホントは、バイザーの内側に映像なんて映らないんです。機械仕掛けのわたしの瞳の、画像情報を得る元が少し切り替わるだけ。 「ん?」 もちろん切り替わった後のセンサーもわたしの物だから、それが気のせいなのは分かってるんですけど……。バイザーひとつ挟むだけで、怖い顔を直接見なくて済む気がするんです。 「ホントは、クウガさんみたいな……ハウリンが、欲しかったんですか?」 だから、本当は言いたくなんかないことも、ゆっくりとだけど言えました。 「んー……まあ、な。最初はそう思ってた」 やっぱり。 わたしの胸のCSCが。峡次さんのお兄さんが作ってくれた部品が、きしりと嫌な音を立てた気がしました。 「なら……なんでわたしを返品しなかったんですか?」 胸が、痛い。 でも、ちゃんと言わないと。 「……返品?」 峡次さんは、わたしの言葉に首を傾げるだけ。 「私、あのお店で買われた神姫なんですよね? でしたら……」 フォートブラッグの基本スタイルは、砲戦特化。どれだけカスタマイズしても、装備を変えても、万能型になるには限界があります。あくまでも近付けるだけで、本当に万能型にはなれないでしょう。 それに、素体は戦闘用のパターン素体を展開出来ない不良品。服を着て戦うなんてイロモノの戦い方をしないと、恥ずかしくって戦うのも難しいでしょう。……主に私が、ですけど。 「……お前、返品されたいワケ?」 そんな! 「そんなわけないじゃないですか!」 CSCがかっと熱くなって、言葉が思わず流れ出ました。 返品なんてされたいわけありません。 けど、けど……! 「わたし、はだかですよ? 服を着て戦うのだって、ホントはしたくないんですよね?」 「……まあ、そうだけど」 峡次さん、昨日寝る前に通帳とにらめっこしてたの、知ってるんですよ? お金ない、バイトしなきゃって言ってたのだって、ちゃんと聞いてるんですから。 「わたし、近接戦って苦手ですよ? 峡次さん、近接戦ベースで神姫を組み立てたかったんですよね?」 「……何でその事を」 さすがにそれには峡次さんも驚いたみたい。 「峡次さんの部屋にあったの、組み立てかけの剣とか、加速用のパワーユニットとか、近接装備ばっかりじゃないですか」 わたしだって武装神姫。基本的な装備運用のシミュレートパターンくらいは入ってます。 もっとも、フォートブラッグのそれは自分で使うというよりも、相手の戦術を見極めるためのものだから……使いこなせるかどうかは別問題なんですけど。 「そう、なんだけどさ」 「たぶんわたし、クウガさんみたいな高機動戦は出来ないと思います」 わたしの脚は速度を叩き出すものじゃなく、確実に戦場を走破することと、砲撃の安定性を高めるためにある。 「だろうなぁ……」 「だろうなぁ……じゃなくて。わたし、砲撃しか出来ないんですよ?」 初期設定の戦術プログラムだって、弾道計算や弾種ごとのダメージシミュレートが主で、峡次さんがしたいような高速斬撃戦になんて対応してません。 その手の戦い方は、きっとベルさんやプシュケさんの方が得意なはず。 「何とかなるだろ」 何とかって……そんな、何とかなるなら……。 なるなら! 「わたしじゃ、マスターの期待に答えられないと思います! お役に立てないと思います!」 わたし、マスターのお役に立ちたいんです。 マスターの期待に応えて、喜んで欲しいんです。 嬉しい、ありがとう、って言って欲しいんです。 でも、バトルで一番の期待に応える方法は、これしか思いつかなくて……。 「……あのさ」 峡次さんは、わたしを向いてはぁとため息。 「はい」 嫌な音。 CSCが、何だかきしりと痛みます。 「バイザー、上げな」 「……はい?」 バイザー? 「バイザー。上げな」 「はぁ」 大きな手がいつ来るか怖かったけど、峡次さんの声に従って、バイザーを上げてみる。 バイザーモードから切り替えた視界は、ぼやけてよく見えなかった。喋りながら泣いてたんだと……わたしは、その時になって初めて気が付いた。 そして。 「ノリ……」 大きな手が、わたしに向かって延びてきて。 ああ、やっぱり……返品されるんだ。 でも、たぶんそれが一番いいんです。峡次さん。 次に来るハウリンには、わたしの分まで優しくしてあげて……。 「ん……っ」 思わず身を硬くしたわたしの目元を、峡次さんの太い指がそっと拭ってくれて……って、あれ? 「うん。ノリは、そっちのほうが可愛いよ」 峡次さんは、優しい笑顔。さっきまでの怖い感じは、もうしてません。 「……はい?」 このまま握られて、真直堂に返品に行くんじゃないんですか? 「ノリさ。今日、電車に乗っただろ」 ? 「はい」 話が良く分からなかったけど、とりあえず頷いておきました。 「すっごく喜んでたじゃない」 「……酔っちゃいましたけどね」 最初は景色がびゅんびゅん流れて、すっごく楽しかったんですけど……そのうち処理が追い付かなくなって、システムが落ちそうになっちゃいました。 「それでも、喜んでた」 「……はい」 頷くわたしに、峡次さんは笑顔。 「ソフトクリームも、美味しかった?」 「……はい、とっても」 もうちょっと食べたかったですけど。 でも……。 「後は……さっきの……」 「あぅう……」 あれはもっともっとしてほしかったですけど……。 「もちろんバトルもするよ? けどさ。そういうのも、なんかいいなーって思ったんだわ。今日」 「はぁ」 でも……。 「で、それが出来るのは、ノリだけなんだよな」 「……そんな、こと……。神姫なら、誰でも出来ることです」 ベルさんだって、プシュケさんだって。 お兄さんのタツキさんや、静香さんのココさんも……。起動したてのどんな神姫だって、さっきは怖かったもう一人のツガルさんだって、アイス食べたり、笑ったり、そんな事くらい簡単に出来るはず。 「うん。そりゃ、最初に起動させたのがハウリンだったら、そいつに同じ事を思ったかもしれないけどさ」 ですよ……ね。 だから、期待なんか……させないでください。 「でも、俺が最初に起動させたのは、ノリなんだよ」 だから……。 「砲撃しかできないなら、最高の砲撃が出来る武器を作ってみせるさ」 期待、なんか……。 「……峡次さん」 「それくらい出来なきゃ、神姫でバトルやっていきますなんて言えないしな」 バイザーを通さずに見た峡次さんの顔は、とっても優しくて。 「俺、頑張るよ。ノリが頑張れるように」 「……はい」 もぅ……。 この人は、なんで……。 「だから、ノリは……バイザーを上げて、笑っててくれ。多分、俺はそれで頑張れるから」 期待、しちゃいますよ? 「……いいん、ですか?」 「何が?」 「わたし、マスターのお側にいて」 ずっと、置いてくれるって。 返品なんか、しないって。 マスターの望んだ戦いの出来ない。砲撃しかできないダメな子でも、ずっと一緒に戦ってくれるって……望んじゃいますよ? 「ノリがいてくれなきゃ俺、どうやって神姫バトルすんのさ?」 ああ……っ! マスター! マスターっ! 「返品させる気がないなら、よろしくな。ノリ」 そう言って、マスターは手を差し出してくれて。 「……はい! はいっ!」 わたしはそう答えて、大きなその手に抱き付いていた。 マスターの手は、わたしを握り潰すことなんかしなくて……ただ、やさしく撫でてくれるだけだった。 戻る/トップ/続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1437.html
戻る トップへ 空を仰げばまだ暗く、西はまさしく宵闇で。 だが一方、東の空は薄らと朝日の光が垣間見える。 頬を撫でる風は、朝の冷えた風だ。 がたがたと揺れる自転車のかごの上、山と詰められた新聞紙の上に座りながら、秋の早朝を堪能する。 「パーシ、次はどこだ?」 後方から声がした。私のオーナー、宗太だ。 「ん~……三丁目のぉ水野さんちかなぁ」 インストールされたナビシステムが示す場所を答える。 遥か彼方には薄明が見えた。 「三丁目か……ちょっと急ぐか」 宗太が呟くのとほぼ同時、自転車がガクリと大きく揺れて、頬を撫でる風が強くなった。 ちょっと振り返ると、宗太がいわゆる立ち漕ぎの状態になっていた。 周囲の風景が早く流れていく。まるで、飛んでるみたいだ。 「宗太ぁ、5m先、目的地ぃ」 「おう」 閑静な住宅街。普段からあまり人通りの多くない場所で、早朝の今は動くモノは皆無だ。 その中にある、立派な二階建ての民家が今度の目的地。 そこは私も、宗太も良く覚えている。 何故なら、こんな時間にも関わらず、朝刊をわざわざ受け取る代わり者がいるからだ。 「おはよーございます」 宗太は眠そうな声を隠しもせず、そこに居る人物の前で自転車を止めそう言った。 「毎朝ごくろうさま」 眼鏡をかけた、細長い男性。この家の人だ。 この人は何が楽しいのか、毎朝私達から朝刊を受け取っている。 「今日の朝刊ッス」 足元が大きく揺れた。私が立っている新聞の山から新聞が一つ引き抜かれた。 「どうも。若いのに大変だね」 少し低い、優しげな声。 「仕事ですからぁ」 宗太の代わりに私が答える。このやりとりも毎朝の事だ。 宗太が高校に入り、学費+αを稼ぐために始めたバイトの一つであるこの新聞配達。 その初日、偶然知り合った私達はそれから毎日、このやりとりをしている。 「そんじゃ、次があるんで」 「最近冷えるから、気を付けてね」 その声を受け、宗太は自転車を走らせた。 「……兄ちゃん、新聞来た?……」 「……最近良く読むね、ア……」 空は明るさを増している。町が、動きだす。 空は青く、海の様に蒼く。 雲は波の様に漂い、流れて行く。 人が溢れかえるこの道。人が雲の様に、波の様に流れて行く。 「はっ、はっ、はっ、はっ……」 その中を、まるでマグロの様に?き分ける者が、一人。 白く息を吐き、だらしない制服をはためかせ、人の波を潜る者が一人。 肩から下げた鞄は不規則に揺れ、中身は滅茶苦茶に……。 「宗太ぁ、急ぐのは良いけどぉ鞄は揺らさないでくれる?」 「やかましい!」 切羽詰った形相で宗太は怒鳴った。 遅刻しそうで焦る気持ちも分るけど、そう言われるとカチンと来る。 「良い詩が浮かびそうなのに、それを台無しにする気ぃ!?」 「おめぇの詩なんてどうでもいいだろうが!」 全力疾走に近い速度で走りながら怒鳴れるその体力にはほとほと呆れ返る。 何より、私の詩を馬鹿にする事が頭に来る。 「どうでも良くないわよぉ! もしかしたらぁ月刊・詩で取り上げられるかもしれないじゃない!」 「んなわけありえーねってーの!」 走る速度が一段上がった。 学校までは残り2,3分で到着だろう。 だが、そんな事よりも大事な事がある。 「何であり得ないって言いきれるのよぉ!?」 「んなもんどう考えたってそうだろーが!」 もう学校の校門だ。周囲の生徒の大半は走っているが、宗太程では無い。 というか、宗太程の速力があったところでバカだったら台無しなのだが。 「何がどう考えたらそうなのよぉ!」 「第一、詩を書くサイフォスなんて聞いた事ねーだろ!」 下駄箱に着き、一瞬で靴を履き替える。下駄箱を出て直ぐ左に曲がり、その先にある階段を駆け上がる。 階段を三段飛ばしで上がるたびに私が入っている鞄が大きく揺れる。 こういうトコに宗太のバカっぷりが表れている。 「私が第一号になるわよぉ!」 「あーそうかい、そいつは良かったな!?」 三階に到着すると、靴底がゴムの上履きがキュルキュル鳴った。 人間ドリフトをしながら廊下に躍り出て、教室を一目散に目指す。 幾ら運動神経が良くても頭が回らなきゃ動物と一緒だ。 「この馬鹿オーナーぁ!」 「うるせぇこのアホ神姫!」 扉を半ば蹴破る様に教室に入り、宗太を席に着く。 と、言っても担いだ鞄を机の上に叩き付けるだけだ。 鞄の中に入っていた私は、当然今の衝撃で外に投げ出された。 一応、投げ出される角度を計算修正して馬鹿宗太の隣の加奈美の机に降りる様に投げ出される。 「聞いてよぉ加奈美ぃ! この馬鹿、私の詩を馬鹿にするのよぉ!」 宗太の幼馴染にして馬鹿宗太に代わる私の唯一の理解者、加奈美。 きっと加奈美なら私の気持ちを分かってくれる筈だ。 「あら、酷いわね」 宗太のぼさぼさ頭とは違う、綺麗で長くて艶やかな黒髪。 まさに女の子、って感じだ。オーナーなら加奈美の方が良かった。 「詩を書くサイフォスが可笑しいとか言うのよぉ!」 「神姫が詩を書いても何も問題無いのにね」 ああ、やっぱり加奈美は解ってくれている。 それに比べて宗太の馬鹿っぷりと言ったら……! 「ったく、ぎゃあぎゃあうっせぇな……」 「何よこの馬鹿宗太ぁ」 男の癖に影でこそこそ言うなんて、最低だ。 加奈美のこの態度を見習えこの馬鹿。 現にこうやってお行儀よく椅子に座って、ちゃんと鞄は机の脇にかけてあって。 机の上には一時間目の用意がしてあって。その上には神姫が座ってて。 「……誰?」 エウクランテ。 私の少し後に発売された武装神姫。 空中戦闘に秀で、アーンヴァルの対抗馬として開発された武装神姫。 そして、今私の目の前にいる武装神姫。 「でさぁ、宗太ったら変な武器ばっか買ってくるのぉ。アニメに出てきそうなバカでかい剣とかぁ変な棒とかぁ」 「そうなのか」 「そうなのよぉ。私は使わないって言ってるのにこの馬鹿ぁ剣ばっか買ってくるのぉ」 「しかし、それは宗太殿がパーシ殿の為を思ってではないのか?」 「それなら私の希望を聞いてくれても良いと思わないぃ? あ、私の事はパーシで良いわよぉ」 「む、確かにそれでは自分の希望を押し付けるだけだ」 「でしょぉ! 流石は加奈美の神姫ねぇ。話が分るわぁ」 時は昼休み。場所は食堂。 学生が唯一学校に楽しみを見出す時間と場所であるここは、当然の如く混み合っている。 学校の食堂にしてはかなり広い方にも関わらず、人口密集度は恐ろしい。 そんな真っ只中、二人掛けのテーブルに陣取り、私達四人は優雅な昼食を楽しんでいた。 「……たく、飯時くらい静かにしろっての。飯が不味くならぁ」 前言撤回。 この馬鹿、生意気にも大盛りC定食を食べながら水をさして来る。 馬鹿は馬鹿らしくヤキソバパン食べてれば良いのに。 「加奈美ぃ、この馬鹿黙らせてよぉ」 「ん~……お昼御馳走になってる身としては難しい質問ね」 加奈美はと言うと、馬鹿宗太のお金で買ったA定食を食べている。 すこし困った様に笑っているが、加奈美はもっと良いモノを食べてもバチは当たらない。 だけど確かに、確かにそれはそうでもある。人道的観点と義理人情的観点から言って加奈美はパーフェクトに正しいと思う。 ただ一つ、宗太が勝ち誇ったように笑ってること以外は。 「加奈美はこの馬鹿にノート見せてんだからもっと強気になっても良いのよぉ?」 「そうなのか?」 「そう、そうなのよぉ。あの馬鹿、授業なんか聞かないで寝てばっかなの。だからって加奈美にノート見せて貰ってるのよぉ」 「ノート見せるくらい御馳走してくれるなら安いくらいよ?」 そう加奈美は言うけど、授業中寝るのは馬鹿の自己責任だ。 責任は自身が取るべきであり、人にノートを見せて貰うなんてのは真面目に授業受けている人間に対して失礼だ。 「……宗太殿、授業を受けずに寝るというのは学生として如何なものかと思うが」 シルフィは本当に良い子だ。 加奈美に似て真面目で礼儀正しい。 そして、加奈美が切り分けた豚肉の生姜焼きを丁寧に食べている様にお行儀も良い。 「シルフィよぉ、そうは言うけどな。俺は朝は新聞配達、夜はコンビニでバイトしてんだ」 「む。その歳で仕事に精を出すのは宜しい事とは思うのだが、学生の本分は学業であると、私は考えるのだが」 「その本分を受けるために、バイトしてんだよ」 「そうなのか……成程。それなら仕方ない……訳では無いな。しかし、学校の為に働くのであれば……」 シルフィはいい子だけど、物事を論理的に考えすぎだ。 目には目を、論理の通じない馬鹿に論理を通す義理は無い。 「シルフィ、騙されちゃダメよぉ。この馬鹿は稼いだバイト代は全部神姫関係につぎ込んでるのよぉ」 「宗太殿……」 「四面楚歌ね、宗太」 「……うるせー」 今日この日、宗太に対する攻撃布陣が完成したと言っても過言ではないだろう。 トップへ 次へ -